禁煙の流れ「受動喫煙」について

 社会の大きな喫煙の流れの中で、大和郡山医師会では、市の歯科医師会、薬剤師会の協力を得て、禁煙Tシャツを作製致しました。
 禁煙の苦難を、束の間の微笑がやんわりと包んでくれることを期待しています。
 9月からはタバコパッケージの表示が大きくなりましたが、それでも内容的にはこ れまでの「健康のためには、吸いすぎに注意しましょう」と同じく、喫煙者本人に向けてのメッセージが主体になっています。
 Tシャツでは、喫煙を「愛する人のために」、と受動喫煙をメインテーマとしました。

喫煙が健康に及ぼす影響については、肺ガン、肺気腫などによる死の危険など、既によくご存知のことと思われますが、自分ではタバコを吸わない人の受動喫煙については、最近の知見等、正確な情報はあまり伝えられていないように感じられます。
@受動喫煙による年間の健康被害(死亡例)は、 
   肺癌  600〜1500(国立がんセンター2001)
   循環器疾患;脳梗塞・心疾患 19000〜27000(金沢大学 2002)
   *あくまでも非喫煙者の死亡数です。念のため。

A心血管障害のリスクと受動的吸入煙量とは単純に正比例するものではなく、図のように、少量から急速に発症率が増加し、わずかな吸入量でも致命的であることが示されています。

B受動喫煙防止を分煙で行っていても、喫煙者の衣服のタール臭からも推察されるように、喫煙後1時間は、肺の中から吐き出した空気の中に多くの有害物質を放出し続けます。ベランダでのホタル族の分煙では、同居乳児の尿中から2倍のニコチン代謝物が検出され、赤ちゃんは知らず知らずにタバコを吸わされています。
   対照群(非喫煙者の子供)   1.00
   屋外での喫煙(ベランダ喫煙) 1.99倍
   開けた窓の傍での喫煙     2.40倍
   台所の換気扇の傍での喫煙  3倍以上
   日常的に屋内での喫煙    15倍       (Pediatorics 2004)       
 また乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクは、喫煙者の家庭では4.7倍に上昇します。(厚生労働省)

 この結果からは、分煙という対策については、全面禁煙、敷地内禁煙の効果との明らかな差について、早急に一考を要することを示しています。
  一方、喫煙習慣そのものについては、ニコチン依存の実態が、セロトニンという脳の中の化学物質を介した精神症状が大きく関与していることも明らかとなり、禁煙が困難な理由や、未成年者に対する懲罰的な強制的禁煙指導の無力さがよく理解されます。禁煙をしようと思っても、うまくいかなかったチャレンジャーの方も、意志の弱さではなく、治療の必要な病気であったことをご理解いただきたいと思います。
 依存症は喫煙開始年令が低い程強くなり、(当然健康被害も大きくなり)禁煙の困難さも増すことから、「ニコチン依存症」の予防のためにも、若年層の禁煙開始を食い止めることが何よりも大切です。
 最も問題となる未成年の喫煙行動の根底には、喫煙者本人のアンケートから、おとなの喫煙行動を目にすること、安価でタバコを手に出来る多数の自動販売機の存在が大きな要素となっており、早急な対策が望まれます。

 大和郡山市医師会では、健康を守る医師として、強力な禁煙キャンペーンに取り組んでいます。
 少々恥ずかしくはありますが、「愛する人のために」Tシャツを着たいと思っています


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