EKW C3603
1000馬力 475km/h
スイスの連邦製造工廠=EKWが1936年に初飛行させ、後にフラッター現象
が原因の墜落事故を起こした多用途機C3601。 その機体が搭載した860
馬力のイスパノ77−12を、1000馬力を出力するイスパノ12Y51に換
装した試作機がC3602で、その固定脚を90度回転させながら後方に引き込
む引込脚に改修した機体が、このC3603となる。
C3603は翼幅15.1mの機体と、13.7mに短縮した機体があり、後者が
量産機の大半を占めている。 他に2機だけ非武装練習機型も生産されている。
C3603は最終的にシリーズ計160機程度の生産にとどまるが、永世中立を
謳う小国空軍が独自に開発・生産した機体としてはなかなかの数である。
この機体が生産される前は、戦闘機はMe109などを輸入していたが、いざ第
二次大戦が始まると、やはり自国生産の必要性が高まった。
元々が多用途機ゆえに、複座で連装の7.7mm後方旋回機銃も装備する等、単
発とはいえ純粋な戦闘機としては厳しかったかもしれないが、それでも軸内の2
0mm機関砲と、主翼には7.7mm機銃計2丁、の火力は、対領空侵犯機迎撃
の多いスイス空軍には十分な火力だったと考えられる。
上昇限度や上昇力も一流には程遠かったが、それでも、一番多かったドイツ機の
領空侵犯事案への迎撃には十分だった。 アメリカ機をはじめとする連合国側の
空中逮捕もたびたび起きており、強制着陸させられた連合軍側重爆も少なくない。
第二次大戦中にこの機体を用いてスイス空軍は6500回程の領空侵犯を迎撃し、
スイス領内への着陸意志の無い機体を250機以上を強制着陸させている。
その主力は間違いなく本機であり、スイス空軍の主力戦闘機として十分にその役
割を果たしたと言ってよいだろう。
本機の後継機として、更にエンジンを1250馬力のイスパノ12Y52に変更
し、武装を20mm3門と7.7mm2丁に変更したC3604が生産されたが、
終戦によりわずかな機数の生産にとどまった。
よって本機C3603こそがスイス空軍の立役者であった事に疑いはない。
性能だけに注目するのではなく、必要な時に、必要十分な性能を、しっかり運用
できる事が良い兵器の条件であろう。 そしてそう割り切って生産を推したスイ
ス空軍と、それを十分に運用した搭乗員や整備員の働きも高い評価を得るもので
あろう。 現在も飛行可能な機体を含め、数機がスイスに残っている
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