夜間戦闘機 月光 (ゲッコウ)



栄21型1130馬力2発 507km/h
元々は双発三座の長距離援護戦闘機として計画された機体であった。
しかし当時の双発機に対する性能の見込みがはっきりせず、性能要求
一覧の中の「12試艦戦並の空戦性能」が足かせとなって、双発なだ
けで特徴の無い機体になってしまった。
開発してしまった以上、何らかの仕事を与える為、長い航続距離と
3人乗りと言うことから、陸上偵察機として一応は採用されたが
性能不足は当初からはっきりしており、ほとんどお蔵入りになっていた。
設計会社の中島飛行機内部で、本機は「G」と称されていたのであるが、
陸偵になるまでに、元は陸上戦闘機、他に雷撃機案、急降下爆撃機案
などが出された為に「Gの七化け」とまで言われた。
しかも、偵察飛行隊に配属されてもさんざんにけなされ、二式艦偵
(彗星の偵察機版)や海軍が面子を捨てて陸軍と共用とした百式司偵と
比べられてしまった為に「最悪」と評されてしまう事になる。
そんな時、ラバウルでB−17の夜間爆撃に悩まされていた小園中佐が
目を付け、自身の案である斜め銃の装備を主張。
お蔵入りの試作機に斜め装備の20mm機銃を無理矢理に取り付けて
ラバウルに投入したところ、その試作機が予想以上の戦果を上げた。
これが「夜間戦闘機・月光」の誕生である。 「G」はまた化けたのだ。
昼間長距離侵攻の援護戦闘機として開発された機体が、夜間の防御に
回って初めて開花したのであるから、皮肉としか言いようがない。
本土防空戦に入っても日本軍唯一の夜戦装備である斜め銃に全てを
賭けて、夜の闇の中から襲来するB−29に敢然と挑んでいった。

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