艦上偵察機 彩雲 (サイウン)




誉21型 1990hp 609km/h
設計段階から艦上運用の偵察専門機として設計された初の機体だが、
本機だけが偵察機として空母からの作戦行動をなし得ていないのが、
いかにも皮肉である。
大きな機体がエレベーターに引っかからないように、ぎりぎりまで
切りつめられて設計されている。 画像でも確認できるが、降着姿勢で
垂直尾翼後縁が地面に対して垂直である。 これは飛行状態の場合
前向きに傾斜している事になる。 降着時に少しでも全長を短くしよう
とする為の処理である。
機体のシステムとしても様々な新機構が盛り込まれている。
層流翼の採用、ダブル・スロッテッド・フラップ、前縁スラット、重量軽減
の厚板構造。 そして何より第2ロットの「誉」エンジンの採用。
「誉」エンジンの不調は他の機体と同じだが、それは「彩雲」の機体の
責任ではない。 それどころか「誉」の責任ですらないかも知れない。
惜しむらくは「誉」を熟成させるだけの時間がなかった事である。
戦争末期に活躍しており、多くの作戦行動に従事し、貴重な偵察行動や、
戦果確認、編隊誘導の要として活躍した。
5300kmと言う、単発レシプロ機としては途方もない航続力を本機に
与えているのは、魚雷型の巨大な増槽タンクである。
戦後の米軍による性能評価では694km/hもの速度を発揮している。
高性能機のご多分に漏れず、本機も夜戦型が存在する。
30mm機関砲1門か、20mm機銃2門を装備したが、30mmは
単発機に合わないとされ、20mmが主用された。
ただ、元が偵察機だけに、戦闘機動時に他の夜戦と同じ感覚で、射撃
位置への占位を行うと、機体がきしみ、空中分解しかけたと言う。
戦闘機や爆撃機改造なら、元が頑丈で10Gの荷重にも耐えるが、元が
偵察機の「彩雲」には、そんな強度は与えられていないからである。

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