三式戦闘機 飛燕 (ヒエン)



「ハ40」1175馬力 590km/h
当時、論議を醸していた「軽戦」「重戦」の固定化した思想にとらわれず
設計された名機で、兄貴分の速度重視の機体「キ60」より速度が速い
と言う程の、優れた弟分である。  その上、運動性ははるかに上。
太平洋戦争中、日本で唯一の実用液冷戦闘機で、大きなアスペクト比
の主翼と相まって、非常に美しい外観を呈している。
しかし液冷エンジンの稼働率の低さはご多分に漏れず、生産も滞りが
ちで、後にエンジンの空冷化が行われ「五式戦」を生み出すこととなる。
希少金属の不足から、エンジン側の改良努力は報われない事となった
が、機体の設計は、空冷化と言う大手術にも耐え得る見事な設計。
当時の日本機にしては異例の15倍以上の荷重強度を持ち、これ以上
は危険だからと、荷重試験を中止する程の強度を持っていた。
これにより「飛燕」は実戦部隊に於いて急降下制限速度は無しとされた
程で、カタログ値でも850km/hと日本機としては群を抜いていおり
実戦では速度計が役に立たなくなる程の全力急降下も記録されている。
また奇跡的ながらも、F6F36機:飛燕2機と言う戦力比を戦い、8機を
撃墜破した記録もある。 これはパイロットの練度に拠る所が大きいが
2機の搭乗員が不時着生還できたのは、強靱性が貢献しているだろう。
飛燕の意外な泣き所が上昇力である。  燃料が軽くなるとそうでもない
のだが、フル装備の上に増槽タンクまで付けると、爆弾を満載した重爆
よりも上昇率が悪かったと言う。
本土防空戦になると、やはりB29を相手に苦戦を強いられる。
武装や防弾装備を除外した空対空特攻仕様が、本機にも適用された
事は、当時としては当然の成り行きだったのかもしれない。

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