戦略爆撃機 2


思考形態の違いと運用

日本軍はとにかく名人芸を求めた。
一発必中。
しかし、戦略爆撃の世界に於いてはそのような名人芸は
必要とされない。 ある程度の熟練や練度は要求される
ものの、それは、煙突に爆弾を放り込む程の練達ではない。
照準器を覗き、目標の上に来たらスイッチを押す。
その照準器の調整と投下タイミングだけである。
アメリカ軍は早くから「人間の能力の限界」に気が付いて
おり、それを補うために機械を多用した。
ソロモン戦線における飛行場の造成しかり、対空砲の効果を
挙げるVT信管しかり、そして、各種の精密照準器、レーダー。
すべて、人間の限界を超えて働くための機械である。

また、戦略爆撃に於いてはその成功率を数学的に計算し
ある地域を完全に破壊するには何tの爆弾が必要かを算出、
それを素に爆撃を行った。
また、木造建築が多数を占める日本への爆撃には焼夷弾を
多用するなどと言う、柔軟性も持ち合わせている。
ドイツへも焼夷弾は投下されたが、日本への投下とは比率が
全く違い、通常爆弾に比べて格段に少ない。
ドイツは石造りの建物が多かったからである。

結局、日本は本格的な量産型戦略爆撃機を持つことができなかった。
諸般の理由があるので、何故持てなかったのかは意見の分かれる
ところであろうと思う。
ただ一つ思うのは、仮に日本が本格的量産型戦略爆撃機を運用
したとしても、諸外国ほどには使いこなし切れなかったで
あろうと言うことである。
使う使わない以前に、戦略爆撃機とは何であるか理解していた
高級軍人がいたとは思えない。(おそらく陸軍所属となるであろう。)
ひょっとしたら、艦隊攻撃にすら使ったかも知れない。
某if小説で戦略爆撃機が最もらしく艦隊攻撃に使われていたが
どう考えても「無理」「無茶」「無謀」の三拍子である。

結局、日本は戦略爆撃機の前に敗れ去ったのである。
原爆投下も、ソ連の侵攻も、そして実現しなかった本土上陸作戦も
必要なかったと思う次第である。
戦略拠点への爆撃と、投下機雷による海上封鎖(潜水艦も含む。)
だけで、十分に日本は降伏したのではないだろうか?


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