戦略爆撃機 4


勝利の方程式、敗北の方程式

では日本ではどうであったか。
前述の
「1つで機体を、1つで燃料を、1つで爆弾を、1つで防弾装備を
運ぶのである。」
の言葉に対する軍幹部の回答、
「機体を軽く作り、防弾装備を外せ。 双発で4発並の性能にせよ。」
その結果が一式陸上攻撃機である。
航続距離を伸ばす燃料を搭載するために、翼自体を燃料タンクとする
インテグラルタンク方式は確かに優秀な航続能力を本機に与えた。
その結果、防弾装備のない面積の大きい燃えやすい翼が、いかに
米軍戦闘機の12.7mm機銃の餌食となったか!!
何人の一式陸攻搭乗員がガダルカナルやソロモンの上空に散っていったか!!
上空から降ってきて、一撃して低空に離脱する米軍機が、いかに易々と
撃墜劇を披露してきたか!!
想像するだに涙と怒りを禁じ得ない。


飛翔する一式陸上攻撃機の編隊。 何機の機体が無事に帰れるのか・・・。

戦争末期、「桜花」の母機となった一式陸攻には、いくらかの防弾装備が
施された。 翼の内外には防弾ゴム(米軍よりはるかに劣る)を装備し、
自動消火装置もエンジンに装備した。 その結果、ギリギリの設計を
していた一式陸攻は、速度の低下、上昇力の不足、鈍重な回避力、と
性能は一層と低下し、そこへ「桜花」を搭載したものであるから、さらに
酷い状態を呈していた。
滑走路をギリギリいっぱいに使っても離陸が難しくなる始末。
また、援護戦闘機すらろくに付かず、その付いている援護戦闘機すら生還が
難しい状況に追い込んだ責任は、はたして誰にあるのか?

防弾装備の欠如。
それは国力の差では無く、発想の差であり、その差こそがこの上なく貴重な
戦力を失わせる結果に結びつき、敗北へと結びついて行くのである。

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