無謀な命令の発令
ところが大西中将が第1航空艦隊に着任した時、その兵力は各機種
合わせてもわずかに40機あまり。
航空艦隊とは艦隊と言っても艦船を持たず、航空機のみによって編成
された部隊であるから、40機あまりの兵力で強大な第38機動部隊
と渡り合い、栗田艦隊を護りきることが不可能なのは誰の目にも明ら
かだった。(4)
もちろん、航空の専門家である大西中将にそのことがわからない訳は
なく、その責務の重さは弱気な司令なら押しつぶされるほどのモノ
だったであろう。
普通の司令官なら、与えられた兵力に爆装させてそれなりに部隊の
体裁を整え、手を振って見送ればそれでシャンシャンである。
捷1号作戦全体には責任が無いのであるから、後は全滅した航空隊
の再建にいそしむ程度である。
ところが大西中将は本気で第38機動部隊を相手にして、ダメージを
与えるつもりでいた。(5)
それでなくても困難な攻撃の命中率を上げる為にはどうするか?
若いパイロット達の「国の為に、家族の為に」と言う思いと、その苦悩
が重なった時、航空機による体当たり攻撃が誕生した。
以上がかいつまんだ神風誕生の一般的に流布されている経緯である。
(1)から(5)迄の主立った小さな理由の積み重ねが大きな行動
となって動き出したのだ。
特攻の主目標となった米空母。 左がインディペンデンス級軽空母、右がエセックス級正規空母。
エセックス級は90機以上の搭載量を誇る。
パイロット達は命と引き替えに、これらの空母の大群を撃滅すべく敢然と立ち向かい散っていった。
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