夜間戦闘(重爆迎撃戦闘)


「ヴィルデ・ザウ」と「ツァーメ・ザウ」と言う戦法が、戦争後半のドイツに
おける夜間戦闘に加わった。
「ヴィルデ・ザウ」は敵機捕捉と同時に発進して上空で待機、敵機編隊の
目標がわかり次第その空域に向かい敵機を捕捉・撃墜すると言うものである。
目標上空での空戦になるので、当然ながら味方高射砲の誤射を受ける可能性
も出てくる。 進化したのかどうかわからない戦法ではあるが、大きな違い
は、単発単座機を夜間戦闘に投入した点である。
一応、地上管制誘導は受けることができるものの、実質は肉眼による発見が
唯一の頼りだった。 燃え上がる都市の炎に照らされた敵機を目視確認して
撃墜するのである。 敵機を発見した時のパイロットの心情やいかに?
イギリス軍の用いた対レーダー攪乱装備「ウィンドゥ」。 電波の波長に合わせ
大きさを調整したアルミ箔を大量に空に撒く。 ドイツのレーダーには莫大な
数の「敵機」が浮かび上がり、実質的にレーダーが用をなさなくなるのである。
その「ウィンドゥ」に対する回答が「ヴィルデ・ザウ」であった。
そしてこの戦法が現れた頃から、イギリス軍の大規模夜間爆撃が始まる。


単発単座夜戦仕様のMe109G。 翼下面の半面を黒く塗り
味方の誤射を防ぐ工夫をしてある。

「ツァーメ・ザウ」はレーダーで捕捉した敵機の群に対し偵察機が接敵。
敵機の大編隊に張り付き、その動向を常に連絡。 その情報を元に夜戦が
接敵し、「ヴィルデ・ザウ」同様に敵機を迎撃する戦法である。
「暗い夜間戦闘」と違いレーダー網から抜けた敵機や、「ウィンドゥ」によって
レーダーが攪乱された場合にも正確に接敵でき各所に配置された迎撃機が
次々に襲いかかれるメリットがあった。
また双発の夜戦にはイギリス軍の使うH2Sレーダーの電波を感知する
ホーマーや、自前のレーダーも装備され、まさしく電波戦の様相を呈していた。

これらが、システム化されたドイツの夜間戦闘体制の大筋である。
レーダーで敵機を捕捉、味方を無線誘導、敵機を確認し撃墜。
確かに現在でもその方式は常用されているが、現在に於いては夜間に敵機を
目視確認してから撃墜するなどほぼ不可能である。
ましてや燃える都市の炎に浮かび上がった敵機を攻撃するなど、どう言った
状況なら起こり得るであろうか?
当時のパイロットにとっては飛ぶだけでも危険な夜間に、敵機の大編隊に
接敵して射撃位置に占位、敵機を撃墜すると言うのはどれほどの危険を伴う
か想像に難くない。


ドイツ夜戦隊の主力Ju88夜戦。 鹿の角とあだ名される
FuG220「リヒテンシュタイン」SN−2レーダーを装備。


ドイツ夜戦の最後を飾る機体Me262B。 レシプロと時代の
違う速度性能は連合軍機に対する最大の脅威であった。

残念ながらと言うべきか、日本ではドイツ程のシステム化された迎撃網は
できなかったと言っても過言ではない。
何よりもレーダー網が不完全であったし性能も信頼性も低かった。
ドイツを爆撃したB17やB24よりも遙かに高性能なB29を相手に、
ドイツ機よりも高々度性能の悪い飛行機で迎撃したのであるから、システム
としては最低限のものであったと言えよう。

当時、空における夜間の戦闘は主に攻撃側の爆撃機と防御側の夜間
戦闘機によって展開された。 現在ではもはや数百機の爆撃機に
対する迎撃戦闘などありえないであろう。
だいたい数百機もの爆撃機を同時に運用できる国がほとんど無い。


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