英国上空戦



バトルオブブリテンは戦闘高度が中〜低空が多かった為に、
過給気の性能差はあまり大きな差にはならなかった。
それよりも大きな影響を与えたのが燃料の質である。

燃料の質
バトルオブブリテンを前に、前哨戦のフランス上空では多くの
ハリケーンが失われた。
ドイツ空軍の多くの戦闘機パイロットは、ハリケーンは組し
やすいとの認識があった。
しかしイギリス上空でハリケーンを発見したドイツの戦闘機
パイロットは驚いた。 フランス上空のハリケーンとは一味
違うキレ者になっていたからだ。
機体やエンジンには大きな変更は無かったが、それまで使用
していた87オクタン価の燃料を、アメリカから供給された
100オクタン価の燃料に変更したのである。
その為にエンジンの圧縮比などの変更が行われたが、この
大幅なハリケーンの性能向上は、明らかに燃料の質の向上
が主因である。
オクタン価とは、簡単に言えば燃料の品質である。
高い数字になればなるほど、高性能な燃料と言える。
この値が低いと、燃料の爆発とピストンの上下運動の間に
ラグが生じ、ノッキングと呼ばれる異常燃焼現象が起き易す
くなってしまうのである。
このオクタン価は石油からの精製技術が大きくモノを言う
のであるが、最も優れていたのは連合軍側兵器工場アメリカ
である。 アメリカは第2次世界大戦を通じて100オクタン価
の航空燃料を連合軍に供給した。 
アメリカは添加剤なども加えて、実に130オクタン価に匹敵
する航空燃料すら使用していた。
戦後アメリカでテストされた日本軍機の性能が、日本で使用
されていた時よりも高性能だった理由の1つは、この燃料の
オクタン価の違いである。
日本では87〜93オクタン価くらいの燃料が使用されていた。

ドイツでは戦争期間を通じて終始87オクタン価の燃料を使用
せざるおえなかった。
対する連合軍は、ソ連軍までが100オクタン価を使用しだして
いるのであるから、これではかなわない。
私的なイメージを書かせて頂くなら、事実とは違うものの、あく
までイメージだけを強調するなら・・・、
1000馬力のエンジンがあるとすると、87オクタン価の燃料で
これを回せば出力は870馬力。  100オクタン価の燃料で
これを回せば1000馬力。  130オクタン価の燃料でこれを
回せば1300馬力。  と言った感じのイメージである。
燃料の質はこんなイメージを持ってしまう程、大きな性能差を
持たらせる要因となるのである。

日本でも、ラバウル方面でほぼ同じエンジンの隼と零戦が
上昇力競争をした時、どうしても隼は零戦に勝てなかったと
言う。 陸軍の87オクタン価と海軍の93オクタン価のわずか
6オクタン価の違いで、実戦を戦うベテラン達が戸惑うほどの
差が出るのである。
100オクタン価と87オクタン価の差、推して知るべし。

バトルオブブリテンではこれらの要素が複雑に絡みあった。
しかし大勢から判断すれば、同じ迎撃機的な性格のスピットと
Me109を、用途に見合った迎撃機として運用したイギリス
と、まったく畑違いな侵攻制空戦闘機として運用したドイツ。
この差が両機の最も違う差だったのは否めない。




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