ライト・サイクロン



日本を焼き尽くしたエンジン、ライトR−3350デュプレクス・サイクロン
B−29のエンジンである。 1発あたり2200馬力を出すが、それが4発。
排気量は5万4千ccに達しており、ターボ過給機付きの巨大エンジン。
初期は冷却に弱点を抱えており、XB−29試作機の墜落の原因となった。
(この時、日本軍の一部の高官が試作機墜落を喝采したらしいが、
 試作機が飛んだのなら次はどうなるか、本当にわからなかったのだろうか?)
B−29だけでも十分だが、同時期に開発されたB−32にも採用されている。


  

左、不時着したB−17から回収されるR−1820。 高価な物件である
エンジンは、たとえ部品取りの為にでも回収しておくのは、補給線の負担軽減
に有効である。 B−17の場合はエンジンがダメでも、ターボ過給機も回収
候補になるだろう。
右、おそらく高射砲かそれに類する大口径砲を浴びたB29のR−3350。
おそらくこのエンジンはアウトで、部品取り行きだろう。
すごいのは、これだけのダメージでもプロペラがフルフェザリング状態である
ということは、機体機構的に生きていたということであり、車輪まで出して
きっちり着陸している点である。 当時の搭乗員の技量と、B29の耐久性
の高さが知れる。


右主翼の第2エンジンが脱落したA−20
脱落したR−2600のプロペラがまだ少し回っているように見える。
右主脚も出てしまっており、機体の立て直しが難しい事を暗示している。
密集編隊の僚機から撮影したものに違いないが、この時の撮影者の思
いはどういうものだったろうか。
構造の強い米軍機でも、やはり航空機の範疇の強度でしかなく、機体で
最も重量のあるエンジンの基部が叩かれるとこうなってしまう。


ヨーロッパは液冷エンジンが主であったが、アメリカでは空冷が強かった。
液冷エンジンもそれなりに使われたが、やはり空冷が強かった。
その空冷の中でも4発機に多く使われているのがサイクロン系である。
B17、B29しかり。 B29だけでも3970機生産されているのだから
単純に15880基のR−3350が必要である。
これに20%分程の予備を考えれば19000基ものR−3350が生産
された計算になる。 B−29用だけで、である。
R−3350は乾燥重量で約1.2tに達する。 金属以外の物も使われ
ているだろうが、やはり1tちょっと程は純粋に鉄等の金属であろう。
とすれば、生産する為の金属の量だけでも約2万tに達する。



特集見出しに戻る