BMW
そして、BMW801を最強空冷エンジンの一角たらしめている最大の要因が「コマンド・
ゲレート」の存在である。
これは簡単に言えば、機械式コンピュータである。
エンジン後方に取り付けられたこの装置によって、従来パイロットが行っていた諸々の操作
を自動化させたのだ。 これによりパイロットは戦闘中に、燃料流量調整やプロペラピッチ
変更、燃料混合比の調整といった操作を行わなくてよくなった。
現在の戦闘機、というか航空機では、電子制御のエンジンは普通である。
車やスクーターですら電子制御だ。 しかしこの装置は歯車やカムやスプリングでそれを
やっているのだ。 それも75年も前に。 ある意味「オーパーツ」と思えてしまう。
しかも試作ではない。 6万基も作られたエンジンの普通の構成ユニットとして量産され、
厳しい前線でしっかりと作動していたのだ。
左がコマンド・ゲレートの全景。 右がエンジン後部への取り付け部分で、左の画像の
裏側にあたる部分に位置する。
左がエンジン後部、コマンド・ゲレート取り付け部分で、右がその内部。 通常の構造の
エンジンに比べて、ギアが多く、取り付け位置が不思議なギアは、コマンド・ゲレートに
繋がって行くらしい。
いわば、これがBMW801の肝であり、比較的堅実なエンジン構造に比べ、2世代先の
技術と言っても良い程の「秘密兵器」である。
こちらはノルウェーのホルダランにて、エンジントラブルで不時着したFw190A
Fw190はイギリスの空軍基地に完璧な夜間着陸をして、そのまま鹵獲された事もある
ので、BMW801の色々な機構は連合軍側にも知られていた。
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