艦載対空火器
射程の穴
この当時、航空機の戦闘速度は毎秒100〜130m位で、20mmの射程に入って
から射撃を開始した場合、10秒程しか射撃機会が得られない。
また、日本軍は40mm射程の武装が無く、25mm機銃も実質1000m程度が射
程なので、1000〜3000m射程の敵機に対しても、追従性能で遅れが見え始め
た12.7mm高角砲で対処するしかなく、時限調定式信管では有効な打撃が期待で
きず、防空能力上その射程が「射程の穴」であった。
ちなみに、肉迫雷撃を旨とした日本軍に対して、TBFなどの米雷撃機は目標の艦の
1000〜2000m程の距離で投弾することが多く、実質25mmの射程に入る事
は多くなかったのではなかろうか。
こう考えると、米軍機の被害が比較的少なかった理由の1つとして、数字の上で納得
できるところもあると思います。
米軍はVT信管により、大口径対空砲の効果の最大化を図ると同時に、3000m周
辺を受け持つ40mm機関砲も多連装化やレーダー連動にして、近距離でも有効な火
力を提供する事に成功した。
3連装25mm機銃に比べて単装20mm機銃は頼りなげな絵面に見えるが、実際は
9人がかりで操作する日本軍の25mm3連装機銃に対し、米軍の単装20mm機銃
は、最大でも2人、緊急時には1人でも操作できるので、配置人員に対する火力投射
能力としては上ではなかろうか。
空母対空火器の対舷射撃の可否
少し年代をさかのぼり、イギリスが建造した戦艦ドレッドノートは、艦中心線上に集
中配置した主砲で、左右両舷に高い砲撃戦能力を発揮した。 また砲門数自体は多く
なく、その分を速力の向上に振り向ける事が出来た。
1つの砲塔が左右両舷に撃てるのは、想像しただけでも有利である事がわかる。
この後はほとんどの軍艦で、主砲となる砲填兵装は艦中心線上に配置されていく。
日本の空母の写真を見る時、飛行甲板から1段下に防空火器を配置した甲板が置かれ
ている事が多い。
当時新鋭の翔鶴型も、対空火器は飛行甲板より1段下に置かれている。
甲板の被弾時や、艦載機のはみだし事故等の際には、要員に最低限の安全を保障して
いる事は想像できる。
傾いているが、米空母エセックス級フランクリン。
対空火器の配置が飛行甲板の高さとほぼ同じような高さになっている。
全ての空母の全ての対空火器に共通する訳ではないが、これを見る限り、日本軍空母
の対空火器は飛行甲板側に向けて射界を得るのはほぼ不可能と思われる。
それに対し、水平に近い方向には指向できなさそうだが、ある程度の仰角を付ければ
米空母の対空火器は飛行甲板の向こう側への射撃も可能である。
片舷射撃しかできないのと、両舷射撃ができるのでは、どちらの方がより火力の集中
を実施できるかは考える迄も無い。
しかし両軍に於いて、最も威力を発揮した防空戦力は間違いなく戦闘機である。
VT信管を用いようが、砲門数を増やそうが、防空戦闘機には勝らない。
また、精神論が入り口となる日本軍に対し、米軍の速成錬成にかかれば、素人から育
成して40時間ほどで対空要員としては配置できるようになるという。
オマケのイギリス海軍ポンポン砲
銃自体は2ポンド砲で、一般的には40mm機関砲に分類されるものの、1ポンドや
1.5ポンドのシリーズや、4連装も存在したが、いずれもポンポン砲と呼称された。
有効射程は4000mとされるが、実質は2000m程だったという。
後に米軍と同じボフォース40mmが導入されると、ポンポン砲は一気に姿を消した。
銃口のファンネルは消炎器だと言う説もあるが、8連装ともなるとお互いの砲弾の発射
圧が干渉して弾道特性の悪化を招くような気がするので、周囲への発射圧の低減を図る
意味合いもあるのではないかと考えています。
この弾倉数。 さすがは8連装。 迫力だけで言えば十分です。
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