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乾燥培養日本脳炎ワクチン(新型)が平成21年6月頃に発売されました。一方、旧日本脳炎ワクチンは平成22年3月で日本での販売が全て中止されました。
平成22年4月中旬より、厚労省は3才になる子に日本脳炎ワクチン予防接種を積極的勧奨(予防接種通知書を発送する)するよう都道府県に通達をだしました。
日本脳炎第3期予防接種を受けた中学3年生の子がADEMにかかり後遺症を残しました。平成16年に厚労省は日本脳炎ワクチン(旧型)接種とADEMの因果関係が否定できない
という理由で、以降日本脳炎予防接種の積極的な勧奨を控えるよう通達をだしました。
その原因として日本脳炎ワクチン(旧型)の製法に問題があるとして、別の製造方法によるワクチンを開発するようにメーカーに指示しました。
厚労省の通達後、日本脳炎予防接種はほとんど実施されなくなりましたが、最近の調査ではADEMの発症数が過去5年間と更にそれ以前(日本脳炎予防接種が
積極的に勧奨されていた時期)と差が無かったことが報告されました。
このことは、日本脳炎予防接種とADEMには因果関係が無いということです。厚労省の見解が誤っていたのです。
ADEMという病気は、日本脳炎ワクチン接種時以外にも、インフルエンザワクチンを接種した時、
麻疹、風疹、水痘などウイルス性感染症に罹患した場合にも発症することが明らかになっています。
ほかにマイコプラズマ、溶連菌等の細菌感染症でも数は少ないですが発症します。
そんな理由で日本脳炎ワクチンの接種は問題ありません。新型ワクチンも発売後1年以上経ち、重大な副反応も報告されていません。
日本脳炎は、東南アジア全域とインド辺りまでに流行が毎年みられます。
中国では年間2−30000人、インド、ベトナム、タイなども数百人から数千人の発症が毎年WHO(世界保健機構)に報告されているようです。
一方、日本、韓国、台湾は10人以下の報告です。この3国は現行の日本脳炎ワクチンを定期接種している国です。
日本では関東以西は日本脳炎の汚染地域になっています。日本脳炎は、人間から人間に直接感染しません。ブタは日本脳炎ウイルスに感染しますが無症状です。
毎年日本脳炎汚染地区の大部分のブタが日本脳炎に感染します。このブタを刺したコガタアカイエカが人間をさした場合に感染が成立します。
ただし、日本脳炎が発症するのは1000人に1人でその他の人は軽い風邪程度の症状で極めてまれです。
逆の言い方をすれば、非常に運が悪いと日本脳炎を発症するわけです。
日本脳炎は発症すると約半数の方が死亡するか重篤な後遺症が残ります。治療は対症療法しかなく、予防が最も大事です。
日本脳炎ワクチンが開発される前は、日本でも毎年多数の患者さん出ていました。
年令は3才以上15才位までに発症数の大きなピークがあり成人では稀で老人に小さなピークがみられていました。
そのため、3才以上で日本脳炎ワクチンの定期接種をするよう予防接種法で定められているのです。
最後に、厚労省が日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨を中止するまで小児の日本脳炎発症者の報告は10年以上ありませんでしたが、2007年度は熊本で3才児、
2009年度は熊本で7才児と高知で1才児の日本脳炎発症が報告されています。成人から老人は毎年10人以下ですが発症があります。