大和郡山市医師会広報指定席
紀伊水道の熱帯魚
藤原博先生



  西宮港を出発して約4時間で大阪湾の南の入り口の友が島水道にさしかかります。ここを通過したとたんに海は広くなり、紀伊半島と四国の間の紀伊水道、つまり大平洋に出ます。大阪湾に比べると波の様相が荒々しく、うねりも雄大となり、この大海原は世界に通じているんだなと実感させられます。走ること約3時間で徳島県の伊島に到着しました。    

伊島は小さな島ですが、ちゃんとした漁港があり人が住んでいる島です。人口は約200人で、子供はあまり見かけませんが小学校も中学校もあるそうです。さっそく釣竿とえさを持って釣りに出かけることにしました。釣り糸を垂らしていると、なにやら小さな赤い魚がポツリポツリと釣れ始め、こんな魚食べられるのかなと思っているところへ、ちょうど島の人が通りかかったので尋ねてみました。魚の名前はネンブツダイと言い、から揚げや煮つけにするとおいしいとのことで、さっそく夕食はネンブツダイのから揚げで一杯ということになりました。少し小骨がありましたがなかなか淡白な味で、塩などふりかけて食べているとついついアルコールが進んでしましました。  

翌日は伊島からさらに南方へ足を延ばすことにし、走ること約3時間で牟岐大島に到着しました。この島は伊島より一回り小さく、無人島で桟橋がありません。島の西に回ったところに小さな狭い入り江があり、その入り江の奥が少し広くなっていました。そこはまるで湖か沼のように波の穏やかな場所で、海面は群青色で何かしら神秘的な様相を呈していました。一息ついたところで、シュノーケリングをすることにしました。フィンをつけゴーグルをかけシュノーケルを口にして、いざ海の中へ。透明度の高い海の中で目にしたのは、色鮮やかな熱帯魚の群れでした。原色の赤、コバルトブルー、まぶしいほどのゴールドなど色とりどりの小さな魚たちが、人間を恐れることもなく目の前をひらひらと泳いでいくではありませんか。ふと数年前にハワイのマウイ島に行ったときのことを思い出しました。現地の人の案内でシュノーケリングをし、たくさんの熱帯魚に出会い、人と魚がつつき合いをしながら戯れたあの時の感動が、この牟岐大島でよみがえりました。魚の数こそ少し少ないとはいえ、色合いや種類には何の遜色もありませんでした。

ハワイに行かなくても、こんなところでハワイが体験できるとは思いもよりませんでした。関西から身近な場所にもかかわらず、すばらしい自然に触れることができ感動的な熱帯魚との出会いを体験できたのは、ひとつはここが大平洋に面していて黒潮暖流の恩恵をうけているからであり、もうひとつは、この島が桟橋のない手付かずの無人島であるからでしょう。いつまでもこの手付かずの自然のままであってくれることを祈りつつ、牟岐大島を後にし帰路につきました。     


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