それにしても、最近の泌尿器科の変化にはビックリしてしまいます。僕が入局した当時は一般の方は性病科といったボンヤリとした印象しかなく、泌尿器科という科名も一般的ではありませんでした。初対面の方に専門を聞かれた時、泌尿器科と返答した時の相手の少し困ったような表情。その後に長々と診療内容を説明し・・・あ−シンドでした。
しかしながら、ここ数年、バイアグラ・シアリスといったED治療薬やハルンケア・ベシケアといった尿失禁治療薬のコマーシャル、また著名人の前立腺癌も続き、泌尿器科の文字が日の目を見るようになってきました。泌尿器科の認知度も上がり最近は泌尿器科と言って「間寛平さん、前立腺癌やってね」「おしっこ漏れたら頼むわ」「バイアグラもらいに行くわ」などと相手からすぐに反応があり、話がスムーズに続き楽になりました。また医者・患者の女性の割合も変わってきました。以前は泌尿器科医といえば男という感じで、学会に行っても野郎ばかり。たまに女性泌尿器科医に会うと宝くじに当たったような感じがしたものです。最近は学会場でも見目麗しい女医先生を多く拝見します。患者さんも以前はたまに膀胱炎の若い女性が受診するだけで、ほとんどは男か高齢の女性だけでした。しかしながら、新聞・雑誌・テレビで女性泌尿器科という新しい領域が取り上げられるようになり、腹圧性尿失禁・尿意切迫・夜間頻尿・・・といった訴えの女性患者が多く受診されるようになり、それに伴い女性泌尿器科医のニーズが高まってきたからだと思います。
このように、泌尿器科の周辺事情や患者ニーズは、どんどん変化している訳ですが、「健康で安楽な生活を支援する」という医療の根本的な役割に変化はないと思われます。
遺伝子治療・腹腔鏡手術・・・医療はどんどん高度進歩し、また細分化してきています。また長寿・高齢化、介護問題など社会状況や患者の個人的要求は時々刻々と変化していますが、食べる・動く・排泄するといった人の営みに変化はありません。
年年歳歳 人相似たり 歳歳年年 医療同じからず
しっかりと最先端医療の事を勉強しながら、地域住民の方々に一番近い場所で、患者目線に立って「尿禁制のとれたスムーズな排尿→安楽な生活」を支援できるように精進したいと考える今日この頃です。