大和郡山市医師会広報指定席
あっち こっち
三橋友次先生



     12月で満80歳を迎え、郡山での開業歴は50年になる。年を重ねる度に親しい友人が入院したり帰らぬ人になると、そぞろ秋風が身に沁みてくる。併せて決断力も低下して中々実行できない事も屡々あってもどかしさを感じる今日この頃であるが、6年振りに絵筆をもって「やる気」になるのに2ケ月、西国33ケ所巡礼(3回目)も体力と相談していたら3ケ月かかった。併し今年4月にスタートして10月迄で9割程済んだので可成り忙しかった。 又、私の母校である郡高や阪神タイガースが頑張ってくれたので、橿原球場や甲子園にも良く通ったし、郡山市観光協会の歴史講座にも入会させてもらっているので「あっち こっち」に右往左往している。    

33ケ所札所の難関とされる上醍醐寺、施福寺と観音正寺は堪えたが、特に9月25日の竹生島宝厳寺(125段×2)、観音正寺(1050段×2)長命寺(850段×2)のコースでは計4010段の石の階段とゴロゴロした岩肌の遍路道は覚悟の上とはいえ、翌日から10日位足腰が立たなくなった。併し彦根港から竹生島に渡る片道40分のオーミマリン号の船旅では懐かしい旧制第四高校の「琵琶湖哀歌」を聞きながら広い湖の中で眼前に迫ってくる島の緑は目に鮮やかで爽大で気持ちが良かった。    

8月29日、30日に石見銀山、松江城と足立美術館のツアーに参加させてもらった。郡山を早朝に出発し米子自動車道の蒜山SAで小憩後美術館に午後1時に着いたが、約90分庭園や絵画、骨董などを鑑賞させてもらった。午前中に降った雨に洗われ新緑に囲まれた枯山水庭、白砂青松庭、苔庭池庭など5万坪の日本庭園を見る窓越しの風景はその壗額縁になるような素晴らしいものであった。特に白砂青松庭は白砂の海岸と松の緑のコントラストが印象的で、縦長の敷地を横に広がった景観に見せるため河川敷に見越しの松を敷地奥に築山を築き、赤松を左に黒松を右に植栽し、石は主に鳥取の佐治石と四国の青石を使用していた。 館内で横山大観をはじめ近代日本画壇の巨匠たちの作品が沢山展示されていた。宍道湖の嫁ケ島を横目に松江市に戻ったが、市は京都、奈良市に並ぶ国際都市である。市のシンボルである松江城の天守閣に登り、濠を周遊する堀川めぐりは風情があって楽しかった。夜は玉造温泉で寛ぎ、阪神が巨人に勝ちフロアーでの安来節の泥鰌掬いに喝采してぐっすり寝た。  

翌日斐川ICから石見銀山に向かいバス停から2、3キロを登ると龍源寺間歩に至る。銀山である「仙の山」の外観は何の変哲もない普通の山であるが、1526年九州博多の豪商神野寿禎が日本海から光る銀山を発見したという。戦国時代には大内、尼子、毛利、豊臣、徳川が領有を争い、武士、鉱夫、家族などが多く居住する鉱山都市(大森町)を形成し銀生産を担った。昨年7月にユネスコの世界遺産に登録されたが、総面積447ヘクタール中、発掘されたのが、0.1%であり未だ多くの銀が埋蔵されているという。銀生産に従事した多数の人達の喜怒哀楽の歴史を勉強させてもらったが、数多い間歩(坑道)の中で昭和44年に閉山される迄良質の銀が発掘された龍源寺間歩に入る。内部は鉱脈に沿って掘った坑道に生々しい鑿の跡があり狭い坑内での水抜き作業は困難を極めたらしい。銀を製錬する過程で多く使用された鉛と苛酷な労仂条件の下ではさしずめ現代では労災補償の対象(珪肺、鉛中毒など)になっていると思う。坑夫の人達が30歳迄生きていれば尾頭付きの赤飯で祝ったというからその悲惨さが偲ばれる。銀山絵巻を見て間歩から3キロ程下ると古い大森町の町並みに入る。江戸時代の町並みは綺麗に保存され、代官所、豪商の庭、数多い古いお寺など両側に見ながらのそぞろ歩きには趣きがあった。  

10月になって秋空の下、堺市の仁徳天皇陵に行ってきた。三重濠を巡らす前方後円墳で面積約4万4千平方メートルの大きなもので、エジプトのピラミッド、中国の秦の始皇帝陵と共に「世界三大陵墓」といわれている。古墳から発見された長持形石棺の大きさにも驚いたが、日本書記や古事記にもはっきりした史実もなく、「魏志倭人伝」にも明確な日本史の記載もない。辛じて4〜5世紀位の朝鮮の「高句麗好天大王碑」の史料に仁徳天皇時代に朝鮮に出兵し、新羅、百済を従えたという記述がある。日本に可成りの強力な中央集権があったと慮られる。帰途堺市内南宗寺に行くと無数の三葉葵の瓦が目につく。ボランティアの方の話では、大阪夏の陣で徳川家康公がここで豊臣方後藤又兵衛の槍で刺し殺されたという。 大きな墓石の後ろには寄贈された松下幸之助さんの名もある。歴史は面白い。旧制郡山中学に昭和16年に入学し、戦時中歪んだ日本史を学び、東洋史も西洋史も殆んど習っていない。何れリタイアする時があればもう1度歴史を勉強したいと思っている。


当ページへの御意見・御質問は下記にどうぞ。
gfish@nara.med.or.jp

表紙に戻る/指定席目次