大和郡山市医師会広報指定席
認知症グループホームでの看取りについて
尾崎謙一先生



ひとりの人が人生の最期を迎える場所は、自宅、医療機関、施設等様々である。現在、高齢者が看取られる場所の8割は医療機関だとされる。介護保険制度下に特別養護老人ホームなどの介護施設が整備され、終末期支援の機能が強化されつつあるが、全体では2%強にとどまっており依然として医療機関での看取りが主流だ。  

全国認知症グループホーム協会が実施した調査では、利用者家族の意識を見ると、本人の身体状況が悪化した際に介護してほしい場所として「現在のグループホーム」とする回答が7割と最も高かった。また、看取りの場所については、64%がグループホームと回答しており、病院との回答は25%程度となっている。また、重度化した後も現在のグループホームで介護していもらいたいと考えている利用者家族は、利用年数が長いほど割合が高くなっている。施設や病院などの設備の充足感よりも、住み慣れた場所、「なじみ」の環境として、グループホームを選択する傾向が強いと分析している。    

一方、グループホーム事業者側の意識としては、「ターミナル対応の方針が明確でない、想定していない」が44.7%と最も多く、「積極的に取り組むべき」との回答は33.6%となっている。「ターミナル対応は好ましくない」との回答も僅かに7.6%存在している。本人、家族のニーズが高い一方で、事業者自身が明確な方針を持てずに苦慮している状況がみてとれる。人員確保、医療連携、地域特性など、単独の事業者だけでは解決し得ない多くの困難な問題が存在しているが、多くの事業所が終末期支援にもう一歩踏み出せない要因を明らかにし、ニーズに応えていけるサービス体制を整えていく必要がある。    

介護保険制度が始まって、「認知症ケアの切り札」として登場したグループホームであるが、現在は全国で11,000施設、奈良県でも99施設と急増している。当初は元気に動ける認知症のお年寄りを想定してつくられたものであるが、最近では入居者の重度化や看取り支援は深刻な課題となっている。これには事業所の支援体制の問題だけではなく、医療が必要になったときに、安易に入院させられないという認知症特有の事情がある。著しく環境変化に弱い認知症高齢者は、病院という異空間に自分がおかれるだけで、混乱し不安に陥る。もしも点滴や投薬に抵抗があれば、非情ながらも人生最期を手足の拘束で過ごすこととなる。  

平成21年度の介護報酬改定でグループホームにも「看取り介護加算」の算定が可能となり、国としてもグループホームでの重度化対応や終末期支援に取り組んでいく方針となった。  「グループホーム オリーブの木」は大和郡山市九条町の地域のかかりつけ医療機関である医療法人おざきクリニックの併設したグループホームとして平成15年9月に開設され、「のんびり、ゆったり、仲良く楽しく」を運営方針に大きな施設にはない、小回りのきいた家庭的な介護、支援を行っています。平成20年3月からは、「看取り介護指針」を作成し、ご家族の向意のもと、診療所に併設している強みを生かして終末期支援、看取りにもわずかながら取り組んでいます。    

グループホームでの看取りとは、単に最期の死に場所として選択し、そこで提供されるケアを看取りと考えるのではなく、その人の生き方や生きた証に敬意を持って支援する「関わり方」そのものを意味している。グループホームならではの日常的な支援、気づきを終末期にも活かしつつ、本人に最期まで関わり続けることが看取り支援の意義であると考える。  世界に例を見ないわが国の超高齢社会での幸福実現のため医療、介護の連携の中でささやかな努力を続けたいと思います。        


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