その戦果2


特攻隊は恐ろしい程の多数機が出撃している。
大集団で攻撃に出る部隊もあれば、たいそうな名前だけは付けて
いるが、実際は単座機1機だけの出撃と言う場合もある。
名前なんかどうでもいい。 直掩機の1機もつけてほしかった。
そしてなにより、もっと早期に勝敗の決着を上層部の面々につけて
もらいたかったと思うのだが・・・。

ウルシーと言う環礁がある。
アメリカ軍の第58機動部隊が投錨する、大泊地である。
九州最南端から南南東に2300km、飛行機で飛んでも9時間かかる。
昭和20年3月11日、海軍七六二航空隊の銀河24機が九州の鹿屋
基地に用意された。
目標はウルシー環礁、目的は米空母への特攻攻撃。
隊長や一部の士官こそベテランが任用されたが、主力を占めるのは
予科練の出身者。 言ってみれば、「やんちゃ」な年頃の若者である。
銀河は三座機で、通常はパイロット、電信員、偵察員が搭乗する。
しかし今回の出撃は特攻である。 隊長の黒丸大尉が言う。
「何故3人も乗せるのか。 電信員が24人も必要なのか。
 何故無理に死なせるのか。」 まさに・・・。
10日の無電の齟齬による出撃中止の翌日、11日朝8時、日本海軍第七六二
航空隊「梓特別攻撃隊」を主軸とする第二次丹作戦が発動した。
2機の二式大艇に先導された銀河ではあったが、意気込みではどうにも
ならない機体の不調や、訓練時間の不足からくる未完成な技量によて、
続々と脱落していく。
飛行開始から8時間、編隊の銀河は15機に減少していた。
戦わずに4割もの機体が脱落したのだ。
それでも稼働率の低い「誉」エンジンを48機も発進時に稼動させた
整備員の努力は凄まじいものである。
ちなみに、ある部隊が3割の戦力を喪失すれば、その部隊は部隊単位
としての戦力を失ったものであると判断されるのが軍事常識である。


梓特攻隊出撃。
「梓」とはもともと「梓弓」の意味で、巫女が持つ邪悪を打ち払う弓の意味。


次項

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