物理的に見る特攻の効果


特攻の戦果に限らず「戦果」と言うものは誇るべき言葉ではない。
戦果の影には必ず死者が存在するからだ。
しかし、勇敢な先人の、国を、人を、未来を信じた行動の結果と
しての「戦果」はやはり心に留める必要があると思います。
以前から私的には、特攻攻撃自体の「効果」に疑問を持っていました。
最近買った小冊子の中に掲載されていた論が、私の考えと一致した
ことで、自信を持ってここに記すことができます。

特攻というもので問題になるのは、まず、搭乗員の死に対する葛藤心理。
次にその命令を下した上層部の無能、の2点である。
ここでは特攻の「効果」だけに的を絞って結論を出す。
故に、搭乗員の心理的な葛藤や、連合軍に与えた心理的恐怖感の効果
などは一切無視して、物理的な効果のみに的を絞る。

では戦略面から見ていこう。
航空戦力は戦闘行動可能な飛行機の数である。
戦闘行動可能とは、飛行機各部が完全に稼動し、搭乗員がおり、
燃料や弾薬が充分に搭載され、周囲の気象や時間がその飛行機に適して
おり、遭遇する敵に対して効果的な攻撃が出来る状態である。
その状態の維持には、莫大な労力と費用がかかる。
特攻に出た機体が敵に遭遇した場合、それらはまず戻ってこない。
連合軍からみれば、空母に当たろうと、撃ち落とそうと、海面に突入
しようと、「来襲日本機全機撃墜」である。
一度使った特攻戦力は、完全に再使用不可能であり、全機喪失となる。
物資の乏しい日本の戦力としては、これは致命的だ。
ましてや、特攻で喪失する戦力とは、その全てが能力の差こそあるが
戦闘行動可能な戦力であるから、その損失は計り知れない。
末期には練習機も投入されたが、戦果を求めるのは無理である。
攻撃に出れば出るほど、自軍の損失が増加するのである。
飛行機はともかく、搭乗員の養成は一朝一夕に出来るものではない。
タイムテーブルの上からも、戦力の補充は2度と効かないのである。
戦略的に完全に間違った選択である。


出撃前の神風特別攻撃隊七生隊の零戦21型と零式練戦
これら機体は、突入成功、失敗に関わらず「全機喪失」となる。

次項
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