航空機と巨砲の効率



単純に考えれば、砲弾の威力はその口径の3乗に比例していく。
例えば、軽巡洋艦の15.5cm砲の威力は15.5×15.5×15.5
となる。 = 3724
対して、重巡洋艦の20.3cm砲の威力は20.3×20.3×20.3
となる。 = 8365
5cm程の口径の違いで2倍以上の威力になる。
さて、大和型戦艦の46cm砲ではこの値が 97336 と言う化け物
の様な破壊力となる。 20.3cm砲の12倍近い破壊力である。

日本海軍の、いわゆる「大砲屋」の間には、こんな考えがはびこっていた。
「同じ重さの弾丸を、飛行機は1発しか撃ち込めないが、戦艦の主砲なら
 飛行機が往復する時間だけで数十発撃ち込める。 故に、戦艦が有利。」
この考えが間違っている事は、史実が物語っている。
射程と言う観念を無視しているとしか思えない。

さて、第二次世界大戦中に現れた、最大の巨砲は何かと問われれば、この
46cm砲ではない。 無論、机上の空論で終わった、幻の戦艦でも無い。
はるかヨーロッパでドイツ陸軍がたった2基だけ製造した、空前絶後の列車砲。
コードネーム「グスタフ」、2番目に製造されたそれには「ドーラ」と言う
愛称が付けられた。
このドーラの口径は実に80cm = 512000 と言う、信じがたい
値の破壊力がはじき出される。 大和の主砲の5.2倍の破壊力である。
砲弾の最大重量は7tに達し、最大射程も大和のそれを上回るのである。

額面通りに威力を発揮すれば、もの凄い戦力になったハズである。
ところがこのドーラ、大戦初期にクリミア半島にある世界最強と言われていた
セバストポリス要塞のロシア軍基地に対して数十発の弾丸を撃ち込んだにすぎない。
この、たった1門の巨砲を運用する為には、専用の線路と5000人近い
人員、専用貨車60両、現場到着→組立開始→初弾発砲に2週間の時間が
かかるのである。 ちなみに現用米軍の空母には6000人の人員が乗り込んで
おり、2週間有れば世界の果てまでいってしまう。



問題のドーラ。 組立作業中。

次項

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