名機の弱点を見る


・総括としての考察

・失敗。

航空機が作られるまでには、机上の計算、図面設計、風洞実験
モックアップ制作など、様々な段階を経て実機が試作される。
そして、実機を飛ばしてみて初めてわかる性能や欠点も多い。
高空飛行時のグリース凍結、機体表面のわずかな凹凸による
空気抵抗、動翼の効きや重さ、機体各部の強度不足。
実用運用が始まってからわかる欠点も(特に日本軍は)多い。
しかし、誰も「駄作」や「欠陥機」を作ろうと設計する者はいない。
それでも設計段階と実戦運用段階でのギャップは出てくる。
現在のスーパーコンピューターを用いた設計手法をもってすらその
ギャップが少なくなる事はあれ、無くなる事は無い。
そのギャップが「弱点」となって現れるのである。 酷い場合には
それは「欠陥」として現れ、大事故につながる場合もある。

・勝ち組に駄作無し、負け組に名機無し。

完全に正しいとは言えないが、一面では正鵠を射ていると言えよう。
確かに連合軍側の航空機でも、例えば「スピットファイア」などは
致命的な弱点を抱えている。 逆に枢軸軍側の「Fw190」などは
弱点らしい弱点が見当たらない。
しかし個々の機体はともかく、大きな視点で見れば、連合軍航空機は
最終的に「勝った」航空機であり、枢軸軍航空機は「負けた」のである。
そして個々の航空機に目を向けてみても、確かに連合軍側の航空機は
弱点が少ないのである。 頭抜けた性能はP47とP38の高空性能と
P51の総合性能、そして一連の四発機の性能くらいであり、それ以外
で活躍した機体の性能に関しては、「頭抜けた性能はないが弱点もない」
と言う所に落ち着いてしまう。 中には欠陥や弱点のある機体もあったが、
そう言った機体は早々に引退したり、第二線級に回されたりして、その
弱点が路程する機会は非常に少なかった。
逆に枢軸軍側の機体では、弱点の無い機体を探すのが難しいのである。
どこかに必ず弱点を抱えている。
あえて引っぱり出せば、前記の「Fw190」と「五式戦」くらいが、あまり
弱点の無い機体と言えなくもない。 ただし五式戦は登場時期が遅く、
数も足りず、総合的な戦力としてはやはり低い評価にならざるおえない。

・秀でた性能は二の次。

航空機に限った事では無いが、兵器と言う物は戦うための道具である。
ナイフも拳銃も戦艦も核爆弾も戦う為の道具である。
よって兵器は「戦う相手に対して有効な攻撃が可能」な性能を有して
いなければならないのは当然であるが、その性能さえ満たしていれば
あとは数の問題なのである。 航空機では無いが、米軍のM4戦車と
ドイツ軍のY号ティーゲルでは、正面から撃ち合えば勝負にならない。
しかし、最終的にはM4が勝利した。 当時のロシア軍のT34にも
M4と同じ事が言えよう。(M4よりはT34が格上だが。)
いずれにせよ最終的にベルリンを制圧したのはY号ではなくM4とT34
だったのは事実が証明している。
Y号は1両1両の性能に拘りすぎ、数的に圧倒的劣勢に立ってしまった。
(実際の所、火力と装甲以外に、見るべき性能は無いと思うが・・・。)
個々の性能を上げるのは、まず数が揃ってからの話しであって、これを
逆にしてしまっては、戦略的な最終勝利はつかめない。
湾岸戦争ですら結局は多国籍軍の数の勝負であり、イラク1国であれだけ
の戦力をくい止めるのはどう考えても不可能だ。
その上で兵器の性能差も圧倒的とあっては、司令官が「いかに自軍の
戦死者を少なくするか」に砕身できたと言うのもうなずける。
話しが「名機の弱点」から相当それているが、我慢して下さい。
結局のところ航空機も同じで、時代の水準さえクリアーできていれば、
後は数の勝負なのである。 1つ1つの性能を研ぎ澄まそうと思えば、
必ず弱点が出てくる。 極限まで速度を追求すれば、運動性が悪くなり
それが弱点となる。 運動性を追求すれば、相手に追いつく事すら出来
ないので問題外。 結局は水準程度のレベルを保ちつつ数を揃える事が
最良の戦力向上策なのである。


次項

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