航空雷撃


アメリカの場合
アメリカは太平洋戦争を含めて、第二次世界大戦の全期間をTBF/M、1機種
だけで戦い抜いたと言っても過言ではない。 アヴェンジャーの配備まではTBD
デバステーターが配備されていたが、戦果はアヴェンジャーのそれとは比較に
ならない程で、参加海戦も少ない。
他の兵器についても言える事だが、とにかく1種類の兵器を大量生産する思想は
雷撃機にもあてはまる事だった。
強力なF6Fの登場と激しい消耗戦の結果、太平洋の制空権を米軍が確保すると
アヴェンジャーはその威力を発揮し始める。
集中して運用される米軍雷撃機は、空母の大きな搭載量と相まって、日本艦隊が
健在な期間にその雷撃効果を十分に発揮し、母艦艦載機の中で最も多く日本艦艇
を撃沈したと言えるだろう。
標的の日本艦艇の対空砲火はアメリカのそれに比べて貧弱な上に、近接信管など
装備している訳も無く命中率も低い。 またレーダーを装備していない相手への
奇襲は比較的容易であっただろう。 しかも制空権をも掌握し、F6Fの護衛が
付いているのである。 ここまで揃えば損害が少ないのも納得できる。
そして万一撃墜されても、救難機や潜水艦がすぐに駆けつける。
損害が少なければ貴重な搭乗員の損失を抑える事が出来、戦力の向上になる。
米軍雷撃機にとって、マリアナ、レイテでの活躍が最大級の戦果の見本市だろう。
活躍の度合いは大和特攻の時の方が大きいかも知れないが、戦略的観点から見る
とすれば、マリアナ、レイテの方が遙かに大きい。 大型艦への雷撃は片舷に集中
させる、などの実戦的な戦術が生み出された事も大きな成果だったと言える。


雷撃訓練(?)中のアヴェンジャーと、着艦フックを降ろしたデバステーター

イギリスの場合
イギリス自前の雷撃機は、これまた1機種と言って良い。 しかもその雷撃機が
複葉機ソードフィッシュなのだから、どう考えたものか・・・。
一応、ソードフィッシュを密閉風防にしたアルバコアや、高翼単葉のバラクーダ
なども開発されているが、パッとしない。 また、空軍機も雷装が可能とされ、
双発のボーフォートなども魚雷を抱いて出撃する事があった
イギリスは、水上戦闘に関して雷撃を極端に偏重していた。
空母艦載機の比率も雷撃機が一番多く、他の機種は他国の同機種に比べて少ない。
大西洋でドイツ海軍戦力と戦ったのは雷撃機戦力であり、その中核は複葉固定脚
ソードフィッシュであったが、後継機の能力不足とアメリカの援助、ドイツ海軍
より強力な日本海軍が相手に次に控えている事もあり、太平洋戦線に出る頃は
その雷撃戦力はすっかりアヴェンジャーに取って代わられる事になる。

イタリアのタラント軍港奇襲の際には在泊イタリア戦艦6隻中1隻を撃沈、2隻
大破と言う大戦果を、わずか20機のソードフィッシュが成し遂げた。
20機の内、雷装機は11機だったと言う。 この作戦にもちいられた魚雷も
浅深度仕様の魚雷だったと言う。 ソードフィッシュの欠点である低速度も、
逆に有利に働いた。
また、ドイツ戦艦ビスマルク追撃戦では舵を破壊する命中魚雷を放ち、自国の
戦艦群が追いつく為の時間をソードフィッシュが稼いだ。
ただしこれは夜間や敵に制空権が無い場合の戦果であり、チャネル・ダッシュ時
にはメッサーやフォッケの待ち受ける空域に突っ込んだ為、壊滅している。


密集して飛ぶ6機のソードフィッシュ


次項

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