ミーティア


1941年5月15日、プロペラを持たない小さな飛行機がイギリスの上空
に舞い上がった。 推力わずかに390kgのジェットエンジンを頼りに、
しかし思ったよりも良い飛行性能を得たその実験機は、イギリス初の
ジェット機として、後のミーティアに繋がっていくグロスターE28/39の
初飛行の姿であった。 機体は単純な構造ではあったものの、既に
降着装置は前輪式となっており、動力に合った配慮がなされている。
搭載された遠心型ジェットエンジンW1はその後W1A、W2B、W2/500
と進化、あるいは分化していき、速度や高度もレシプロ機では難しい領域に
到達していった。 E28の「E」は「Experiment」の頭文字。


グロスターE28/39第1号機
同機は今でもイギリスの博物館に展示されている。


E28/39が飛んでから2年後の1943年5月5日、グロスターF9/40
が飛び上がった。 後のミーティアシリーズの試作機だった。
E28/39で研究・開発された各種のエンジンを搭載され、その性能を見て
いき、機体各部に改修などを加えられていった。
この試作型8機に続いて、1944年1月に初の量産型ミーティアF.MkTが
20機製造されイギリス軍に納入された。 このうち14機が実戦部隊の
第616飛行体に配備され、連合軍ジェット機初の実戦配備となった。
この時点で、ドイツ軍のMe262のJumo004エンジンが完全な整備を
必要とする稼動時間(オーバーホール時間=部品や装置としての耐久性)が
わずかに10〜20時間程度であったのに対して、ミーティアF.MkTの
ロールスロイスW2B/23エンジンは実に180時間のオーバーホール時間
を達成していた。 ちなみに日本軍の使ったレシプロエンジンは、個々の能力
と言うよりは部品の品質や平均的な整備技術にもよるが、オーバーホール時
間は100時間以下が普通だった。
いかにイギリス製ジェットエンジンが熟成されていたかがわかる。
第616飛行隊のミーティアF.MkTは充分な訓練をパイロットに積ませ、
ジェット機の飛行特性と戦術を体得させるのに充分な役割を果たした。
また、飛来しはじめたV1ミサイルの迎撃にも参加している。
1944年10月と11月に実施された米英共同の対戦爆連合模擬空戦では
最高時速が660km/hと、Me262より200km/h近く低かったものの
ジェット機に対するパイロットの練度の高さなどから、P51やP47といった
高速のレシプロ護衛戦闘機を振り切り、一方的な勝利を収めている。


ミーティアF.MkT
模擬空戦とはいえ、当代一流の護衛戦闘機を翻弄したのは
ジェット戦闘機の面目躍如といったところか。


次項

特集見出しに戻る