英国上空戦


一般にバトル・オブ・ブリテンと呼ばれる戦いは、様々な航空機
が矛を交え失われていったが、やはりクローズアップされるのは
まさに歴史的な戦いとなったイギリスのスピットファイアとドイツの
Me109の死闘だろう。
もちろんその他にハリケーンを筆頭に様々な航空機が参加して
いるのは周知の事実であるが、やはり代表格はこの2機種である
事には違いないと思います。
今回は飛行機だけにスポットを当てるのではなく、それ以外の
要素を見て行きましょう。

エンジンの戦い
イギリスはスピットファイア。 ドイツはMe109。
この2機種がバトルオブブリテンの主役格であろう。
さて、航空機の性能、特に戦闘機の性能はエンジン性能が非常に
大きな要素となってくる。
ではこの2機種はどのようなエンジンを搭載していたのか。
バトルオブブリテンで主力を務めたスピットは数ある派生型の中
でも、初期型の1型と2型である。
1型はロールスロイス・マーリン3を、2型は同12を搭載している。
マーリン3は1030馬力を出す。 この型が全備重量が3t足らず。
マーリン12は1175馬力を出し、全備重量に大きな変化は無い。
スピットは機体に大きな変化を加える事無く、この時期のみに絞っ
ても10%以上の出力アップを得ている。
対するMe109はE型からF型にバージョンアップするが、主役を
務めたのはE型である。
エンジンはDB601AからDB601Nへ換装されるものの、両方の
エンジンは同一出力の1175馬力。
エンジン馬力については、ようやくスピットがMe109に追いついた
と言ったところであろうか。
それでもMe109の方が高速を誇っており、さすが重戦闘機である。


バトルオブブリテンの真の主役。 マーリン(左)とDB601(右)。
イギリス・ドイツ、両国を代表するエンジン。

エンジンの性格としては、マーリンは手堅く、DB601は斬新である。
マーリンは通常のV型12気筒、27000ccで、燃料の供給も通常の
気化器を装備し、過給器も一般的な機械式である。
対するDB601は倒立V型12気筒、34000ccで、直接噴射式の
燃料供給装置を装備、過給気は液体クラッチ式の無段式である。

気化器と言うのは燃料と空気を混合する機械で、キャブレターとも
言い、今でも主に小型エンジンで見られる一般的な機械である。
燃料噴射装置はフューエルインジェクションと言われている技術で、
燃料に高圧を加えて霧吹きのような形で、エンジンへ燃料を噴射す
る装置である。 今では電子制御されており、多くの車のエンジンが
こちらにシフトしている。
実戦面ではこの2つの形式が空戦に大きな影響を与えている。
直噴式のDB601はマイナスG機動、突っ込み時のように急激に
機首を下げる機動をしてもエンジンが正常に作動した。
気化器式のマーリンは急激な機首下げをした場合、燃料供給に
ブランクが生じ、エンジンが息つく状態になる。
これが何を意味するかと言うと、Me109は急激な操作での降下が
可能だがスピットはそれができない、と言うことである。
急激に降下するMe109をスピットは追えず逃げられる。
高空から突っ込んでくるMe109の攻撃を回避するにも、180度の
ロール機動がスピットには要求される。
空戦では大きなハンデになる事は疑いない差である。




次項

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