西部戦線2



ドイツにとって西部戦線での新たな航空戦は、バトルオブブリテン
迄とは大きく違っていた。
1つに、多数のアメリカ製高性能機が相手である事。
次に、多くの場合戦略爆撃機に付随する護衛機を相手にする事。
更に、戦勢が劣勢で兵力で劣っている事。
などが挙げられる。

特に爆撃機に随伴する護衛機は厄介で、護衛機と交戦すれば爆撃
機に爆撃作戦を完遂させてしまう。 爆撃機を相手にすれば護衛機
に叩かれる。


連合軍最強の護衛機P51D。 胴体と主翼に敵味方識別のためのインベイション・ストライプを
施された、ノルマンディー以降の作戦機と思われる機体。 右は高空独特の排気煙の航跡の中
おそらく迎撃戦を展開するMe109系か。

また、ドイツ陸軍が壊走し戦線が非常な勢いでドイツ国境に近付く
中で、航空基地もまた後退を余儀なくされる為、どうしても押される
体勢の中で航空戦に挑まねばならない事は非常に不利だった。


左は5インチHVARロケット弾を10発懸吊するP47。 地上攻撃機としても運用され、
退却するドイツ地上部隊を追撃した。 右はロケット弾を発射した瞬間のP38。
こうした戦闘爆撃機も多用されドイツ空軍と激しく争った。

初期段階での制空権争いに失敗したドイツ空軍司令官ゲーリングは
地上軍の反攻作戦に呼応する形で、空軍各部隊による反撃作戦
ボーデンプラッテ作戦を実施する。
その兵力の多くは、戦闘機総監アドルフ・ガランドが戦略爆撃の被害を
何とか抑える為に、「大兵力での迎撃」を計画し温存しておいた兵力
だったと言う。
その兵力をすっかり引き抜き、投入されたボーデンプラッテ作戦の
結果は予想よりも遥かに酷い結果だった。
連合軍の航空機を450機以上も撃破したものの、ドイツ空軍の損害
も300機以上を数えた。 連合軍の航空機はほとんどが地上撃破で
パイロットの損失は少なかったのに対し、ドイツ軍は部隊長級を含む
指揮官や優秀なパイロットが多く失われた。
悪天候での作戦の強行。 無線封しによる齟齬。 などが作戦に参加
したパイロットの足を引っ張った結果だった。
連合軍は膨大な生産力を背景として、すぐに損失を補充できたものの、
ドイツ空軍にはもはや余力は無く、その背骨はこの時に打ち砕かれた。
以後、ドイツ空軍は反撃どころか、防空すらままならない状況となる。



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