北欧2



大国ソ連と小国フィンランドを主役とした北欧の戦いは一旦
小休止となったが、それがいつまでも続く訳ではなかった。

わずかな休戦期間の間に、フィンランドには大変大きな戦力が
アメリカから届いた。 アメリカのブリュースター社は正直に
喜んだに違いない。 競作機のグラマンの新型F4Fに敗れて
艦載機として落第させられた自社の製品「バッファロー」の引
き合いがあったのだから。
急いでフィンランドに送りたい所だが輸送便の安全の問題から
梱包のまま一旦スウェーデン迄送り、そこで組み立て、その後に
フィンランドに空輸する方策が採られた。
冬戦争当時、D−21を駆って活躍したのはフィンランド空軍
第24戦隊。 フィンランドの空を、ひいては独立を守った部隊
である。 その部隊から腕に覚えの有るパイロットが空輸した。
こうしてフィンランドに救世主「バッファロー」が降り立った。
フィンランドではブリュースター社の自国発音であるところの
「ブルーステル」と呼ばれる。
アメリカの落第生で、ゼロ戦の的になってしまった機体は、ここ
北欧で光り輝くことになる。


D−21の7.7mm機銃から12.7mm機銃に火力が強化。
艦載機譲りの運動性も良好、速度もD−21より優速、防弾鋼板
も装備し機体が頑丈で稼働率も高い。 さらに無線装備が優秀で
空中戦の大きな武器になった。
BW−356はフィンランドにおける個別機の識別番号。
翼と胴体の鉤十字は、ドイツのハーケンクロイツではなく、冬戦争
当時からの「青いスワスチカ」であり全くの別物。


こうしてフィンランド空軍は少しパワーアップしたが、まだまだ
戦闘機が不足していた。 何せ相手は数千機を擁するソ連軍だ。
いかに好性能のブルーステルとは言えわずかに40機そこそこ
ではいかにも心許ない。
そんな時、ソ連と「友邦」であるハズのドイツからお声がかかった。
フランスで鹵獲した戦闘機を買わないか、と言う用件だったが、
友邦ソ連が不利になるような提案をよくも出来たものだが、後々
それはフィンランドの路線を大きく変えるものになるのだが、とり
あえずソ連の再侵攻に備えて戦闘機が欲しいフィンランドはその
フランス製の鹵獲戦闘機を購入した。
少し前にイタリアからの戦闘機の輸送を妨害したドイツが、今度は
鹵獲品とは言え売ってくれると言うのだ。 裏が無い訳が無い・・・。

北欧3カ国のうちノルウェーはドイツが占領するに至った。
スウェーデンは中立。 ドイツの息のかかり始めたフィンランドに
対してアメリカは禁輸政策に出たし、他のヨーロッパ諸国は既に
ドイツに占領され、イギリスは自国を守るので精一杯。
この頃の状況は、こうしてフィンランドを非常事態に陥れていた。
そこに巨大な一石が投げ込まれた。
ドイツは対ソ侵攻作戦「バルバロッサ」を発動した。
返す刀でソ連は、ドイツの親派フィンランドに砲撃と爆撃を開始した。
別に付きたくも無い枢軸側につかざるおえなくなり、後にドイツと
交戦しているからと言う理由で連合軍側に入ったソ連と再び砲火を
交えねばならない。 こうして第2次世界大戦の戦火は、まったく
戦闘を望まない北欧の小国フィンランドを戦火に飲み込んだ。
フィンランド呼称「継続戦争」の開始である。


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