北欧2



頼みの第24戦隊のブルーステルは大活躍した。
満を持して殴り込んできたソ連空軍は、わずかな数のブルーステル
に圧倒され、フィンランド上空の制空権は序盤戦において完全に
ブルーステルが掌握していた。
とは言え、フィンランド側に全く被害が無いわけではない。
損害覚悟の物量戦を挑んでくるソ連空軍の前に被弾や被墜も
生じるのは当たり前である。
他国なら「損失」で処理されてしまうような損害でも、この国の
兵士達は命がけで回収して後方に送った。
敵陣内に不時着した機体を、それを回収する為だけに、部隊を
動かし、見事奪還した例さえある。
全損からの復旧はたった一つの国営工廠が受け持ち、見事に修復
して前線に届けた。 こうして数少ない戦力の損失を極力抑えて
それどころか鹵獲したソ連機さえ戦力化していた。


パイロットは無事だった横転事故。 これくらいの破損なら修理して
前線に送り返す。 この後方支援能力も戦力の支えに不可欠。
廃棄寸前の機体を修復し、前線に送り返し、その機体が撃墜を重ね
た記録もある。 搭乗員ごと華と散らせた日本とはえらい違いだ。


「ナチスと戦う者は誰であっても援助する。」
共産主義嫌いで有名な英首相チャーチルはこう宣言した。
そしてアメリカ産兵器はイギリス経由でイギリス産兵器とともに
PQ輸送船団に積み込まれソ連に運び込まれた。
レンドリースと言われる対ソ援助の開始である。
こうなっては圧倒的な物量に飲み込まれるのは言を待たない。
ドイツは焦った。 フィンランドも内心焦った。
しかしフィンランドは戦闘機は強いが攻撃戦力(爆撃機)は弱い。
ドイツのPQ船団攻撃にも、フィンランドのムルマンスク鉄道攻撃
にも屈せず、続々と兵器や物資がソ連に流れ込んでいく。


ソ連に供給されたハリケーンUB。
ソ連機として撃墜され、フィンランド軍に鹵獲された1機。
ソ連にせよイギリスにせよ、大国のエゴがこの写真に現れている。


ブルーステルはBW351からBW394までの番号が割り振られ
一機一機の戦歴が全て記録されていると言う。
このBW393は隊長格のエースパイロットが乗り継いだ機体で、
合計41機のソ連機を撃墜している。
その中にはソ連の運用するスピットファイアも含まれている。
機首の黒い山猫マークが第24戦隊の部隊マーク。


レンドリース機以外にもソ連独自の新型機が登場し始める。
Yak、Mig、Lagg、と言った新鋭機に対しては、さしもの
ブルーステルと言えども苦戦を強いられるようになった。
1943年初頭、フィンランドにメッサーシュミットMe109G2
が到着した。 フィンランド名「メルス」の誕生である。
Ju88やDo17なども供給され、レンドリース妨害の為の攻撃に
出たがすぐに壊滅してしまった。 結局、戦闘機のみが強化された。
そもそも他国を攻撃する意思の無いフィンランドにとっては戦闘機
こそが重要なのである。


フィンランド空軍のメルスMT227
メルス供給開始の初期に供給された機体である。
この機体は第24戦隊所属機として戦っていた空戦で撃墜されたが、
被墜時に主翼の破片が別中隊の中隊長機を巻き込んでしまった。



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