カテキズム作戦



1944年11月12日、トールボーイを搭載した全備重量32トンの
ランカスターが用意された。 英第5爆撃機集団第9中隊と第617中隊
配備の総数32機の改造されたランカスターからは、銃塔や装甲が外さ
れ燃料の積載量を増加させていた。
6トン爆弾トールボーイは約2トンの炸薬を内包しており、以前も攻撃に
使用されていた。 ティルピッツ攻撃の切り札だった。
6トンの爆弾と、7トンの燃料を満載したランカスターは、午前3時に
離陸を開始した。


第617中隊、通称「ダムバスターズ」所属のランカスター。

暗闇の中を飛び、一旦ノルウェーに入ってから北海方面へ飛ぶ形を取る。
低空を飛び集合した各機は長機の信号弾の合図で、一気に高度を取る。
6トン爆弾を有効に利用するには、高空からの投下が必須なのだ。
突然レーダースクリーンに映った多数の編隊に、あわてて迎撃に上がる
ドイツ空軍戦闘機。 ティルピッツ防空の任を持っていたのはJG5。
生涯200機以上の撃墜数を誇る、極北のエース・弱冠27歳のハインリッヒ
エールラー少佐を航空団司令とする精鋭だった。

高度4300m、雲も敵機も無し。
最高の条件の下、トロムセフィヨルドに殺到するランカスター。
幾重にも張り巡らされた防雷網の中のティルピッツはまだ静かだった。
突然の強襲に煙幕の展張すらできていない。 フィヨルドの青い水面上に
はっきりとティルピッツの姿が見える。
エンジン全開、爆弾倉開放、トールボーイが北欧の冷たい空気に晒される。
フィヨルド上空に達した時、猛烈に対空砲火が火を噴き始めた。
先陣の第9中隊18機の長機の爆弾倉からトールボーイが投下される。
僚機からも次々にトールボーイが投下される。

しばらくの落下の後、トールボーイは凄まじい勢いで第2砲塔と、艦中央部
を貫通し爆発、後部にも命中。 陸に1発落ちた以外は防雷網の中で炸裂。
命中弾の衝撃と多数の至近弾により、上空からでも巨艦の揺れ動く様が
確認できたと言う。
母艦搭載爆撃機の爆弾を弾き返した砲塔上面装甲もトールボーイの前では
紙のように貫通されてしまったのだ。 弾火薬庫の誘爆が起こる。
3分後に後詰めの617中隊14機が殺到した頃、5万トンのティルピッツは
傾いていた。


爆撃に晒されるティルピッツ。 命中弾の爆煙が確認できる。



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