プラット&ホイットニー


第2次大戦時、アメリカの航空機用エンジンメーカーの双璧は、
間違いなくプラット&ホイットニー社(P&W社)とライト社
であった。 この2社は主に空冷エンジンを製造していた。
液冷エンジンにはアリソン社をメインに、ロールスロイスの
マーリンをライセンス生産したパッカードなどもあるが、海軍
の実戦機は全て空冷。 陸軍も双発以上の中・大型機はほぼ
空冷だった。
米軍で液冷を使っていたのは、陸軍戦闘機と一部の小型機位
で、ヨーロッパと違い、日本と同じ空冷寄りのエンジン選択が
主流だった。

P&Wの当時の主力エンジンはツインワスプの名の1830系と
ダブルワスプの名の2800系だった。
元々、P&Wの処女作がR−1340という星型単列9気筒の
エンジンだった。 これも低馬力ながら広く使われた。


P&W R−1340系ワスプ

ノースアメリカン社の礎となったAT6テキサンが装備している。
このR−1340を元に、前後7気筒の星型複列14気筒とした
ものが、R−1830ツインワスプエンジンである。


P&W R−1830系ツインワスプ

まさしく、ワスプのツイン形式だが、単列を7気筒としている。
冷却用の気流を後列の気筒に当てる為の配慮なのは明らかで、
稼働率や整備性を考慮した過渡期と言う印象を受けるものの、
その信頼性は折り紙付きだったと言えよう。
最大1200馬力というのが売り文句だが、これも1830系の
中の派生で上下する値である。
主な装備機種が、米海軍のF4F、TBD、PBYなどで、
序盤の米海軍機の多くをこのエンジンが支えていた。
陸軍では後の液冷P40に繋がるP36戦闘機や、名輸送機
C−47、4発機最大生産数を誇るB−24などもこのツイン
ワスプだ。 つまり、苦しい戦争前半を何とか支え、良い意味で
全期間を通じて使用された優良作と言える。

そして戦争後半の雄がR−2800系のダブルワスプだ。



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