BMW


現在はドイツ製高級車で有名なBMW。
正式には「バイエルン発動機製造株式会社」であり、いかにも自動車会社と言うよりは
エンジンメーカー的な出発点だと推察できる社名である。 
現在正式には「ビー・エム・ダブリュ」と英語読みだが、昔はBMWと書いてベームベー
などと読んでいた。 こちらはドイツ語読みなので何となく違和感に感じたものだった。

1928年に、アメリカのP&W・R1690をBMW社がライセンス生産を始めた。
1933年にそれを雛型として独自に改良したものがBMW132エンジンである。
R1690自体が1926年産なので、この時点では少し出遅れ感がある。
BMW132は、民間型Fw200、Ju52輸送機、Ar196水上偵察機などにも
主用されたが、民間型はキャブレター型、軍用型は燃料直噴型になっていた。
機種を見るまでもなく、手堅く、信頼性の高いエンジンであったろう事が伺われる。


BMW132、星型9気筒 960馬力、最大では1200馬力を発生したという。


そのBMW132を複列化したエンジンが計画された。 主に爆撃機などの大型機を的に
したエンジンとされていたが、フォッケウルフ社のクルト・タンク博士が自身の戦闘機に
そのエンジンを使いたいと言い出した。 Me109の主力エンジンDB601系は供給
の優先権が得られないと考えたからである。



BMW139、星型18気筒 1550馬力、

しかし、その戦闘機Fw190の試作機は冷却不足に陥り、全面設計し直しになる可能性
すら出てきた。 エンジン直径を小さくできないか?
こうしてBMW139の小直径化が推し進められた。

9気筒の132を複列化した139は18気筒だったが、新たに小直径化したものは
14気筒とされた。 なんと設計開始から半年で試運転にこぎつけ、そこから1年を
経ずして量産に入った。 日本では考えられない速さだし、試作の機体と試作の動力
を組合わせるセオリー破りだからすごい。 日本ならまず失敗しただろう。
また、ここらへんの気筒数の変遷は、14気筒・栄エンジンと18気筒・誉エンジン
の逆になっているあたりが興味深い。

これが、後に6万基も生産されるドイツ空冷エンジンの雄、BMW801である。


同じ14気筒でも、栄の約28000ccに対し、BMW801は約42000ccと
驚くべき差がある。 ただし重量も約550kgに対し1000kgと倍ほどもある。
これで「小直径化」なのだから、日本の「軽量化」は異常なレベルか。

Fw190AはMe109Fと並び立つ戦争中盤までのドイツ戦闘機の双璧。
Ju88は爆撃機として、そして夜間戦闘機としての功績は高い。
戦闘機は液冷一辺倒のヨーロッパ戦線にあって、豪快に飛び回った一線級戦闘機は少ない。
それを支えたのは間違いなくBMW801である。
しかし、そのBMW801は、実は非常に手堅い設計のエンジンである。
馬力を大きくするために「小直径化」の掛け声のもと、重量1000kgに「抑えた」の
だし、排気量も4万ccを超えた。 無理している設計ではありえない。
実際801は139より直径だけを見れば90mm小さいのだが、出力は1500馬力級から
1700馬力級を経由して、最大は2000馬力級に達している。

ただし、ドイツ空軍の整備方法であるところの、運転時間が一定時間に達したら、修理では
なくエンジンごと交換し、お古は後方の整備工場へ送り出し、前線での負担を減らすという
方策には少々合いにくく、小直径化を優先した為、取り外しや補器の整備・調整などは今迄
よりもしにくい構造になっており、一部の整備は拷問級であったらしい。
しかも、戦争後半には補給線の維持は不可能で、後方の施設も壊滅状態とあって、結局は
前線でのやりにくい整備をせざるおえない状況となるのだが、その頃はA型は少なかったの
ではなかろうかと考える。

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