数字の錯覚



現在でも、長さや重さを表現する単位は結構な種類がある。
世界的な完全統一はなかなか難しいようで、色々な法律や規則が世界中で
運用されていて、それに沿う形で色々な単位が使われている。
さすがに現在のワールドワイドな世界で、キュビトのように独裁統治者の
腕の長さを単位にしていては、流れから置いていかれてしまう。

第二次大戦時の単位で目立つのは、やはり速度の単位と長さの単位である。

代表的な速度の単位は、日本に於いては「km/h(キロメートル・パー・アワー」
だろう。 時速何キロメートル=1時間で何キロ進むか、の意味。
零戦などの場合、水平最大速度は550km/h前後になると思うが
これは1時間で550km移動できる能力を持つ。
実際は全速飛行を継続するのは難しいので、巡航速度に落とす必要があるが。
海軍の場合、速度はノット表記で表す事が多い。
特に艦船の場合は、全部ノット表記である。
先の「km/h」の距離の部分の「km」が「海里」になったものだ。
1海里は1852mで、だいたい1.8kmくらいと考えてよい。
1海里に1.8を掛けるとkmに換算できる。
これに照らせれば10ノットは10海里×1.8で、だいたい18km/h程度になる。
この速度換算は、艦船はもちろん航空機にも適用される。
逆算すれば、零戦の最大速度は550÷1.8で、だいたい305ノットとなる。
ノット表記は、日米両海軍共に共通である。 
さすがに鬼畜米英・敵性表記などと言っていなかったようだ。

翼内武装から単排気管の52型乙以降の機体。 それでも1130馬力の零戦。
大戦後半では完全に低馬力の出力となってしまったが、それでも500km/h台
まんなかの速度が出せたのはたいしたものだ。 


さて、米軍の航空機はkm/hの速度表記はほとんど無い。
米軍機はほとんどが「マイル(mph=マイル・パー・アワー)」表記である。
(ちなみに、1海里は1ノーティカルマイルとも言う。)
1マイルは1609.344mなので、だいたい1.6kmくらいと思ってよい。
なので「mph」の数値に1.6を掛ければkm/hへと換算できる。
例えば、私が覚えている印象的な一文が、「米軍で初めて時速400マイルを越
えた機体」と言うF4Uコルセアの説明である。
時速400マイルだから、400マイル×1.6で640km/hになる。
米軍機で「マイル」表記が出てきたら、1.6を掛けてやれば良いわけだ。

窓枠の多い、初期型のバードケージ・コルセア。
零戦初飛行の1年後、1940年にアメリカでは既に2000馬力級戦闘機が飛んだ。
画像の機体は、1942年9月に編成された米海兵隊VMF124所属機。 同隊は編成後
3か月も経たない内にガダルカナルに派遣され、到着後すぐにレスキュー任務のPBY
の護衛にあたった。 日本軍に負けないハードスケジュールである。


更に航空機には非常に重要な要素として高度がある。
日本の場合、高度はほとんどメートル(m)表記になっている。
速度にはノット表記を用いた海軍でも、飛行高度はメートルである。
ところが、米軍の場合はこれがフィート単位になる。
1フィートは0.3048mで、ほぼ30cmと思ってよい。
米軍機はよく「高度10000フィート」と言う表現をするが、日本人が1万という
数字から感じる印象よりも、実は低い。
10000フィート×0.3=3000m となる。
日本軍機にとっても低めの高度だ。 全速でスプリットSなどかけようものなら
危険な高度といっても良い。
B29の飛行高度10000mをフィートにするには0.3で割れば良い。
10000m÷0.3 は、だいたい33333フィートになる。
正確には0.3048で割るべきだが、読書中にそんな割り算を出来る人は少ない
と思うので、1フィートは30cmと覚えておけば参考になると思う。

ところで、1平方マイルとはどの程度の広さだろうか?



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